だいたい俺は卑怯で醜い人間だ/道草次郎
 
ぜんぶがだめになる
なあ
ぼくの言葉の精度は
笑っちゃうほどわるくなった
だんだんみにくくなる自分がわかる
ぼくはそれでもまだなんとか体はうごくし
しんだって這ってだって
ごみや汚物を投げつけられたって
仕事をして現金をえなければならない
そうしないとやしなえないのだ
やしなうものがいないものをやしなうのは
このどん底みたいなぼくだけなのだ
そういう事実の棒が一本あるきりなのだ

詩はすばらしいよ
でも
ぼくは詩がかねにならないのを知ってる
だから
やっぱり現金をつかみたいのだ

ぼくはとてもおおくのまちがえをしてきたし
とてもおおくの期待を反故にした
あとは負債を返済するだけのじんせいなのだ
それはよくわかってる
しかしそれもいい
それがじんせいならそうするまでだからだ

ぼくはひとまず
働き口をみつけ
それから送る金を掴まなきゃならない
泥のついた手で男らしい目をぎらつかせじぶんより弱いものをすら
金のために嬲ることもいとわないだろう

げんじつをみろ
それが現実というものだ
それが生きるということだ
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