黒猫と少年(5)/嘉野千尋
 
詩集を投げて寄こした。
  その詩集の三ページ目が破れてなくなっていることに、
  少年は少し前から気付いていた。
  黒猫が破ったそのページの詩も、実は覚えている。
  それは少年が昔書いた詩集であったし、
  三ページ目の詩に黒猫を登場させたことも覚えている。
  ただし少年は、黒猫がその破り去った三ページ目で
  紙飛行機を作って飛ばしたことはまだ知らない。
   



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