黒猫と少年(5)/嘉野千尋
 
 
 *三番目

  三番目の窓を開けると、その先には夕暮れの森が広がっている。
  それから机の三番目の抽斗を開けると、
  昨日の夜に見かけることのなかった月が眠っていたりする。
  少年にとって、三番目というのは特別なのだ。
  そういえば、と思い出す。
  生まれてから三番目に出会ったのは、黒猫であった、と。
 「ねえ」
  窓辺で詩集をめくる黒猫に向かって、少年は呼びかけた。
 「ぼくらが出会った日のことを覚えているかい」
  黒猫はニ、三度瞬きをしてから詩集を閉じた。
 「邪魔をしないでちょうだい」
  黒猫は不機嫌な様子を隠そうともせず、
  少年に詩集
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