映画『赤ひげ』と父の思い出/
道草次郎
「変えられないものを受け入れる冷静さと
変えるべきものを変える勇気を
この両者を見分けるえい知を」
ぼくは思わず父の書斎を見回してしまった。そこはかとなく何かの気配を感じた気がしたのだ。もちろんそこにあるのは、ただ、静寂ばかりだった。その静寂は、しかし、今に至るまで忘れられない静寂であった事は否定できない。あれは、紛れもなく特別な静寂だった。ぼくに書くことの出来る歳月への手紙は、まだ、これぐらいなのかも知れない。
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