映画『赤ひげ』と父の思い出/道草次郎
 
中の一場面、蒔絵師の六助という一人の死にかけた老人の臨終にまつわる部分だ。劇中赤ひげは、配置されて間もない保本にこの六助の最期を看取るように命じる。赤ひげは言う。人の一生のうちで臨終ほど荘厳なものはないと。自身の処遇に不満を抱いていた保本だが、困惑しつつもこの赤ひげの命を受けることとなる。?

さて、いよいよ臨終の時。?

六助は、喘ぎとも呻きともつかない声を吐きながら、苦しみを最後の最後まで嘗め尽くし息を引き取る。その光景を目の当たりした保本は呆然と立ち尽くす。やがて保元の胸には、動揺とともに赤ひげへの反発心が湧き上がって来る。なにが荘厳なものか、こんな最期がどうして荘厳なものか、むしろ
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