眼のない光/ただのみきや
内から喰われる
くちびるから離れる熱い器
つかもうとして膨らんだ白い手は光にとけ
網膜にしみる青さをかもめが掻っ切った
上澄みだけ日差しに毛羽だった
時のよどみ底なしの 泥夢――現実
鏡の奥行 あわい粉飾
のぞき見る歌声は祝祭の面ざし
ひからびた血肉の古い絃を探る
母音の祝詞
風の愛撫に燠火はめざめ
火の粉の群れがいっせいに舞い上がる
陰影の蝶番ははずれ
死者は生者を身にまとい
摩耗した悲しみのカメオも
うす紅のばらの瑞々しい気色をおびる
ああ現の煩いを煙でまく
ささやかな欺きによる救済
しなやかな音楽の肉叢よ
深淵から浮び上る原初の姿態
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