土竜/妻咲邦香
人に話を合わせるのが上手く
相槌の中に時々土竜の紛れ込む
人は総じて四つん這いで歩きし生き物
前足は土を掘るか空を掘るかの違いのみで
優しさなんて習わしも本来は無かった筈だ
進みなさい
前に進みなさい
神にも見放され初めて綴れる言の葉ありて
風を祀れ、水を括れ
縁側に二足並んだ鼻緒の色に
妹は姉を慕い、姉は妹に涼を送る
土は見ている
今日も世界に学を届ける
その為だけに選ばれしその姿その形
ただし彼には「壁」という概念が存在しない
実は紛れ込むのは土竜だけではないのかも知れず
そうでない者等の代わりの役目も
その土竜が果たしているとしたら?
進みなさい
いいから前に進みなさい
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