死ぬ男/
ノボル
看護婦の顔が
間近に見えた
葉子
声は風にならない
ばたばたと
誰かが遠ざかる
点滴の管が
ひどく太い
*
私は
死につつあった
胸のあたりがひゅうひゅういった
コンピュータのなかのいくつものマス目や
並んだ数字
朝から
何台もの救急車がやって来た
やって来ただろうか
葉子の顔は
私を覆ったままだ
大丈夫
家にお帰り
そう
そういえばお前に
何か
尋ねなければならない
遠くで
ドアの閉まる音がする
闇が音をかき消していった
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