エデン〈小噺〉、他/道草次郎
線いっぱい綴り合わせたかのような異観を呈し、奈落へと自らを豪勢に捨てていた。奈落に底は無かったし視界に入って来るのは濃密な霧だけだった。どこまでもどこまでも霧は立ち込めていた。マゼランよりも随分昔の話になるが、勇気ある一人の船乗りが大いなる滝下りを敢行した。真っ逆さまに、その目もくらむような滝壺へ船頭から突っ込んだのだ。すると、途端に濃い霧は晴れ、遥か西方に新大陸が姿を現した。
宇宙時代の幕開け。アポロの探査機による観測が行われるまでは、月の裏は何もなくのっぺりとしていた。それまでは遠くの星々もただの飾りに過ぎなかった。文字通りの張りぼてだったのだ。アポロの探査機が月の周回軌道をまわった
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