エデン〈小噺〉、他/道草次郎
ったその日、月の裏にはその表とよく似たあばた模様が浮き上がった。思春期の面皰のさながら、しかし、もう何十億年とその顔を晒し続けたといった風情すら漂わせて。遥か彼方の星々はその輝きを増し、星座はふたたび息を吹き返した。
銀河系を飛び出すまでは、銀河のむこうはぼんやりした夢だった。それはまるで靄がかかった朝の草原だった。銀河間飛行をはじめて成し遂げた種族がそこに見たのはさらなる漆黒と遥か彼方に見えるアンドロメダ銀河。その先はどこまでも茫洋としていて、不透明な灰色のよく分からない塗り壁に過ぎなかった。銀河団の羊膜を思い切って突き抜ければ…、その種族の心にはそんなが想いが兆した。
宇
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