風を待つ/服部 剛
 
仕事を終えた電車の中で
ついポケットから取り出すスマホの画面に
誰かからメッセージはないかと、探す

家に着いて
ポストの蓋を開けては
誰かから便りはないかと、探す

忘れた頃に届く
心のこもった手紙を
両手で受け取りながらも 
日々に追われ
壁にかけた暦(こよみ)は知らぬ間に…捲(めく)れゆく 

――私は一体、何を待つ?

生涯にたった一度あるような
淡い恋文 
ずっと色褪せない 
友情の絆 
または
明日の道をそっと照らす、知恵の言葉

幸いを探して虚空を弄(まさぐ)る
寂しい手よ

待つことの秘儀を、私は知りたい 
音の無い夜の部屋に
身を沈め 
そっと目を閉じて
透きとおる感性のアンテナを立てる

自分という器(うつわ)を、空っぽにして 







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