6号線を下って-磯原の海/Giovanni
 
誰も僕のことなんて考えていない
誰も僕のことなんて気にも掛けない
20には20なりの
青白い燐光立つ
必死に衰弱した世界があって
胸一杯に影を溜め
東京から国道6号線を
北へと向かった

8月の終わりだった
急ぐ必要もなかった
ときどき薫る海風を心の友と
ひたすらひたすら行った

飴色の光が空に満ちるころ
茨城の外れの
磯原へ辿り着いた
大きな岩と
打ち散る海飛沫を見ながら
1人歩いた

向こうの揺らぐ水平線に
詩人の悲しい両目を見た気がした

幸せだった
幸せだと思っていた
そこでは確かに
誰も僕を傷付けなかったし
僕も誰かを傷付けなかった
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