夜、夜/田中修子
青い青い夕暮れ、イチョウの葉が金の鳥となり羽ばたいてゆき
「おつきさま こんばんは」と絵本の言葉で
三日月指さす この子の目はきらきらしている
月のおそばにいる あかるい星は
燭とり童というんですって
月の灯をロウソクにいただいて、頬の産毛が光っている童子はね、
ね、
いつか、ひからびた大人になるの?
夜……夜、オイルヒーターが カチ カチ カチと秒を刻み
部屋は、乾いた布の香り、昼間外で干されたすこうし、
冷たい冬の香りが温められて 甘くなっていくから、
枕に頬をうずめて、くうくう、という寝息を聞きながら
どこからかやってくる
夜が器を満たしきって溢れ出す音を
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