詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
ると

かもめの翼は さっと身をひたしては旋回に移ってゆくことだろう
(楜澤厚生訳)

鴎は翼に乗って、つと水をかすめては旋回し、
(川本皓嗣訳)

鴎は翼で躯(からだ)を浸し舞いあがってゆくのだろう、
(東 雄一郎訳)

鴎は翼で?を濡らし 回転する
(永坂田津子訳)

 原文に忠実な訳であり、詩の大切なイマージュを翻訳しているのが、この箇所に限っていえば、森田さんの訳だけであることがわかる。ぼくが英語の詩や小説を読んでいて、もっとも自分の詩句のためになると思う書き方の一つに物主語・抽象的事物を主語にしたものがある。日本語で考えるときに、なかなか思い
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