詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
叫ぶことができる。
喉には苦しむことができる。
ただ、ささやくことは禁じられている。
つぶやくことは禁じられている。
沈黙することは禁じられている。
突然
小学校の教室の、ぼくの使っていた机の穴が
ぼくのことを思い出す。
ぼくの指が
その穴のなかに突っこまれ
ぼくの使っていた鉛筆が出し入れされる。
ポキッ
間違って
鉛筆を折ってしまったときのぼくの気持ちを
机の穴がなんとか思い出そうとしている。
折れた鉛筆も、自分が折られたときの
ぼくの気持ちを、ぼくに思い出させようと
ぼくの目と耳に思い出させる。
ポキッ
鉛筆が折れたと
[次のページ]
戻る   Point(14)