詩の日めくり 二〇一五年三月一日─三十一日/田中宏輔
のものが聞き耳を立てる。
すべてのものが
ぼくとのあいだに、なにかを共有する。
なにか。
きのう、帰りに
地下鉄に乗ってるときに
アイコンタクトされてたのに
気がつかないふりをしてしまった。
あまりにも、むかしの恋人に似ていたのだ。
彼はぼくより2段上のエスカレーターに立って
ぼくを振り返っていたけれど
ぼくは横を向いていた。
先に改札を出て
わざとらしく案内地図を眺めていた。
ぼくには勇気がなかった。
すべての人類から肌の色を奪う。
すべての人類から言葉を奪う。
うんうん。
そうしてくださいな。
あと、耳とか少し感じます
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)