Sci-Fi anthology あとがき編/道草次郎
 
わたしたちのあいだにぶしつけな仕草やみだらなことばが交わされたことは一度もなかった。わたしは優しく、礼儀正しく、寛大に、思いやりをもってきみに対したし、きみもまた優しく、礼儀正しく、寛大に、思いやりをもってわたしに対してくれた。

 生前のきみに決していったことのなかったことばが、わたしの口から出たのは、ブルーの制服姿の警官たちが、きみのなきがらを遺体運搬車に運んでいったときだ。

「愛しているよ、エリナー。どこへ行ってしまうんだ、わたしのかわいい恋人?」

 エリナー、きみの居場所は知っている。きみの小さななきがらは棺におさめられ、この世界の裏側、ヴァージニア州のどこかに眠って
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