視破線/ただのみきや
 
て床を跳ね
一秒を三連符でとる男は両手で月を風呂に沈める
いつも丸裸にされたこどもが刺青される夢を見た
それら全てが手紙であり騙し絵だった


わたしたちはわたしへと集約され
夏の繁栄と殺戮を見つめる芥子の眼のように
暗唱する
運命の轆轤を回し 神秘の釉薬を塗り
絶対零度の火を呼び下す
ひとつの虚構を影としたその対照的対称よ
ホトトギスの樹の洞に隠された胎児の骸
擂粉木(すりこぎ)に全神経を欹てて黒く苦い乳を垂らし
よく出来た人形のように醜悪に全てを捉え
胡乱(うろん)な生と死の半熟を好んで食べる


眩い光に呼吸のしかたを忘れ
  絶望の
 先にある
淡い朝焼けにたなびく雲を泡立てようと
一本の葦で空を切るこどものまま
収縮と流出の外側へ
 わたしはわたしの影 
  青い血のトルソに跨って



                   《2021年1月23日》











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