月下/
ひだかたけし
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し曝された己が魂の
他界への予感と恐怖
その震撼とする体感故か
今宵も月が何処かで
響きのない轟音を立て
地平線に巨大に昇る
どろんと朱に濡れ澱み
此界を濃密に染め上げて
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