カスタマーサービス/中田満帆
 
閉鎖病棟へ移された。足の感覚がおかしかった。さらに3ヶ月して、開放病棟に移された。ほかの患者たちがいった。「やっとまともに話せるひとに出逢った」と。いくつかのひとびとと仲良くなった。さらに2ヶ月しておれは退院した。もとのヤサにもどった。家賃を払い、公共料金を払った。ベッドのうえにもうカナエはいなかった。それから1ヶ月しておれは引っ越した。金はまだたんまりとある。もはや、かの女がおれを求めないということが少しだけ悲しい。でも、いまさらいえることはない。おれはこうやって小説もどきを書いて、少しばかり叙情することもできる。かの女ならきっと、おれがいなくともやってけるだろう。おれはそう信じてる。

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