カスタマーサービス/中田満帆
。おれは観念して死ぬことにした。そしておれは眼を瞑って。》
*
という具合にみじかい断片をつづった。カナエはもう眠ってる。おれはタイプと紅茶で、不眠症の夜を乗り切ろうとしてた。小説らしい、小説にはとっくに厭きあきしてたし、じぶんにその才能がないのにも打ちのめされてた。だからといって、書くことを諦めることにはならなかった。できなかった。見失った目標、そして好機にしがみつき、どこまでも終わらないダンスをつづける。世界をめぐるダンスを。
きょうでもうカナエともおさらばだ。きのう、最期の愛液を蒸留ポットから取りだした。アルコールとかの女の体液を混合し、蒸留させると液体麻薬が完成する
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