散歩の途中で/空丸
 

普段通りの朝に、「普段通りの朝」とタイトルを付け、線路脇の風車小屋で私は風景になる。雲の流れに音はなく、時刻表通り電車が走る。
何年生きたのだろう。川辺のベンチで、白髪の老婆が、風にあたっていた。何もなかったように。
ひざっこぞうを陽にかざし、飛行機雲を一本ひく。
西瓜の種をどこに飛ばそうが自由だった。
あの頃はどうでもよいことなど一つもなかった。
遊び疲れた子どもはくるくる回りながら子宮に帰る。
何人かの思い出の中にぼくがいて適当に処理されているのだろう。白黒の縁側で笑っていた。
後ろ姿は朝に向かっている。最終ページは書きかけのまま。
そうこうするうちに大通りに出た。
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