中る/ただのみきや
 
ない何者かになって
 その日その日を生きていた
見たくもないテレビドラマを見続けるように
 坦々と騙し騙されて


あなたのために食卓を備える
 青い海の真ん中へ
  服も脱がずに飛び込むように
少しだけ幸せな猫を
  赤い紐で殺めるように
あなたのために食卓を備えよう
わたしが開封されないまま
泥濘からの手紙として
     八つ裂きにされるように
月と引き合う真珠より
高価な毒を夢に抱いた
    瑞々しい蕾のように
あなたの背中に開いた窓から
      これら全てを眺めながら



                    《2021年1月9日》


   







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