中る/ただのみきや
 
真っ逆さまの光の頂
 集めた八重歯を笊で濯いで
女は大きなアサガオの
   白い蛾に似た花を吸う
小さな蜘蛛が内腿の
      汗の雫に酔っている


生木の煙 風の筆
飛び交う無数のデッサンが
炎で羽化し気色を孕む
黒い帽子で隠し通した
       恋情の黄変に


人気のない交差点
紐の絡んだ人形が青信号を待っている
その眼差しはゆるく溶け
気化した花が耳の奥
        服を脱ぐ


自我は自重で沈下する
地は柔らかく肥えながら
いつも飢えて巧妙な
笑みで手ぐすね引いている
その肖像は綿毛をまとい 満面に
漲っては 四散して
 
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