あの幻影の中の幽霊/トノモトショウ
足
右に
傾いて
安定せず
よろめいて
箱庭の片隅で
一筋の濁った夢
あるいは妖艶な爪
感じ合う二人の側で
幽霊が笑っているんだ
仕舞い忘れた毛布の中に
時期外れの扇風機の羽さえ
残骸のような有り様で絡んで
ギザギザの触手を伸ばしている
まるで関せずただ貪っているのは
欲望の歯車が止まらないからである
意識の排泄を止められないからである
浮かんだり消えたりしながら唇を舐めて
歪んだり翻ったりしながら狂気を注ぐので
世界が灰色に見える病に取り憑かれてしまう
描いた幻影から逃げられないので疲れてしまう
もうすぐテレビでまた悲惨な戦争映画が始まるよ
幽霊は小声で何か呟いて吐き出した煙に遂に紛れた
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