家畜小屋からの手紙/佐久間 肇
 
砂地に隠した 赤い靴を探していた
山羊が一匹 靴下の中から出てきて
黒いペディキュアのされた わたしの足を噛む
爪先から あなたへと向かう快苦のしるべを

許されようものなら、わたし

( 寝首に
   巻きつくこと
    が
     できようものなら
      わたし、    ) 

 舎の上に立ちどまりて
 牛の鳴き声 高く遠く
 売られ切り刻まれてゆくサダメの
 青い舌をかいくぐって、

 あっかんべ

 靴が、
 ころり

( 違うの
   これは
    隠したのではなく
     落とした、
      の   )

ねぇ、山羊さん

お手紙を

 出すから

  かならず

   あの人に

    届けて、よ


約束、よ
 一方的な、ね
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