静かな処/塔野夏子
此処は静かだ
これまでに感じた静けさを
寄せ集めたような静けさだ
此処には
君とだから来られた
そして他には誰も居ない
さえざえと澄みわたる処
静かな処
けれど知っている
この濃密な静けさには
かなしさもくるしさも
はげしさもくるまれているのだと
だから この静けさは
深く けれど果敢(はか)ないと
ただ今は感じる
此処で 君と私とが
交響するのを そして静けさが
不思議なほど甘美な伴奏となるのを
此処に
居られるのは束の間 だからこそ
この交響を ひたむきに感じ尽くすのだ――
戻る 編 削 Point(3)