哀愁の強行軍/ただのみきや
 
予想図

わたしの人生の尺に
息子の人生の尺はまだ収まっている
わたしの息子への関心は非常に大きく
息子のわたしへの関心はそれほどでもない
直(じき)に息子の人生はわたしの尺からはみ出して
淡々と 坦々と 列車がホームを出るように
わたしの知らない時代へと行くのだろう
なにも持たせてやれないだろう
酒の席の笑い話では 時折
記憶から引っ張り出されることだろう





輪郭迷路

面差しの四つ角に焼け焦げた星
結露した硝子窓 苦笑する薔薇
切り傷のような言葉を口移しに
 遠ざかってゆく
冷たい窓の反射
真白なオレンジの破裂


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