暮れる/
岡部淳太郎
暮れる
時のなかで
凍土の冷たさの下に
埋められた思惟を思う
それらの骸の無念を
思わずして時は暮れることはなく
それらの物語の無惨を
録せずして時は回ることはなく
それでも日は沈み
星は回り
月は物問いたげに輝く
その隙間に思いをすべりこませては
ただ忙しなさのなかで時を待て
間断なき寒さとともに
我等の息は上がっていき
その白さに立ち止まる
そして特に待ち望んでいたわけでもない時が
明ける
(二〇二〇年十二月)
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