Vermillion/
TAT
横降りの
みぞれ混じりの冷たい雨が
降っている夜
俺は入り口も出口も無い
迷宮に裸足で迷い込んでいて
そうだこれは
あの昭和の日の
淋しい哀しい夕暮れだ
と思った
豆腐売りのラッパの音
俺は小二で
脇目もふらず
必死で逃げていた
砂利道を
足の爪を剥がしながら
ペタざつジャリざりカツガツと
全速力で
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