冬の花びら時の河面/ただのみきや
 
冬の朝顔

白い背表紙の本を開くと朝顔の種が落ちて来た
種は発芽して瞬く間にわたしの妄想に絡みつき
ひとりの女の形を編み上げると濃淡を宿す紫や白
水色やピンクの花を幾つも付けたのだ
脳に直接甘いリキュールを注射したみたいに
狂気は炎の蝶の囁きで恋の詩を書かせよう誘惑する
朝顔をビードロ状に咥えて裸で幾日も過ごした後
わたしは本棚の奥から黒い背表紙の本を取り出した
それが地獄の始まりだった





舌足らず

にわか花
うつろな煙の顔にふっと
それが欲しくて
灰ばかり
どうかどうかと
牡丹餅黴(ぼたもちかび)て
欄間(らんま)
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