あのヒトこのヒトそのヒト/こたきひろし
あの世の方角に
足も目も向けたくはない
この世の果てはどのあたりで
この世のお終いにはどんな音色のファンファーレが鳴るのか
何も知らされないまま
物心ついたらこの舞台に立っている自分に気付かされたんだ
ある朝
目が覚めたらガランとした空間の中にひとりぼっちだった
そのときに
私は私で私以外の何者でもなくてさ
私以外の何者にもなり得ない存在なんだと思い知らされたんだ
自我の目覚めってやつさ
すると何処からかあらわれたんだ
女がひとり
母親づらをしてさ
それから男がひとりあらわれたんだ
父親づらしてさ
あのヒト
このヒト
そのヒト
みんなヒト
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