あの人/
道草次郎
所にいるあの人は
ぼくだ
墓には苔が生えていた
カップ酒と
つまみのピーナッツが供えられていた
あの人の母が持ってきていたのだ
雷滝と呼ばれる滝の音を
遥か下方に聴きながら
少年はあの時から
人生の暗くて深い森へとわけ入ったのだ
それと知らずに
ぼくは
あの人の来世としてぼくを生き
ふたたび死ぬだろうか
暗い森は道半ば
数学をやることは崇敬なことだと
なぜか思い始めている
そして
ぼくはあの人にたいし
不敬である
戻る
編
削
Point
(2)