破断された時間/道草次郎
 
ったってありはしない話だ。君はどこまで狡猾な蛇なんだ。


ぼくはいま、君との電話を切り、横になって浅い息をしている。息をすることが気に入ったような人のように息をしている。ぼくはもうかなり精神的に参っているのだろう。妥当な落とし所を探しはじめる。治癒の要る魂について、審判はじき下るだろう。ぼくは、おおげさにするより他のない人間だろうか。そうしないと、どうにかなってしまう肥大化した自意識の腐敗物か。ぼくは、そのようなものか。

ちがう。そんなはずはない。自分をそんなふうに貶めたくはない。何故だろう。わからない。でも、なぜかそう信じるしかない。希望も絶望もない。あるのはただ息だけ。息を追いかけるように次の息が、さらに次の息が。生存は宛てがわれた義務。このようななかでいったいどうやって何事かを絶望できようか。ただ次の息を招きその息とさらなる次の息の合間に全一なる肯定の刃をつき立てるより他はないのだ。

呪詛と肯定と見分けがつかない。
ぼくはやんでいるのか。どうかこの感情を一つのフィクションとして、漆黒の闇へと笹舟に載せ流してしまいたい、しまえたら。

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