仄かなノスタルジーの監獄/ホロウ・シカエルボク
がした
薄く
軽い布のような心だけになって
誰も居ない地面で
風に
弄ばれているような…
いつかこんな時間に
もう一度おれは何かを書こうとするだろう
けれど、モチーフは
指先に伝わる頃には
もう
ほんの少しニュアンスを変えているだろう
おれは首を横に振る、いや、そんなことは
産声を上げた頃から
全部わかっているんだ
おれも
おれが書きつけるものも
おそらくは
きっと
一枚の薄っぺらい布に過ぎなくて
風に煽られて片隅を浮かせたり
苛立たしげに
裏返ったりを繰り返しているのだ
身体についた
パンのかけらを払い落とし
量が多いだけが取り柄の
コーヒーを飲み干す
ひとつ小さなゲップをする
口もとを指で拭う
長い夜が始まる
きみがそばに居れば
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