裸眼/ひだかたけし
 
雪降る宇宙の冷たさが
染み入るようなこの夕べ
俺は沢庵を噛みながら
胸奥の不安を呑み込んで
恐怖が襲うその手前
達磨のように揺れている

 視界の奥では麗しい
 星と星とが四百年ぶり
 接近しては重なり合い
 輝く夜空の三日月が
 銀の鱗粉散らしては
 祝福の宴を司る

 (言い知れぬ
 不安と恐怖の裸眼には
 視界の奥の出来事が
 理解不能な祝祭で
 同じ〃私〃の現実の
 表と裏とは露知らず
 ただ眼を刳り貫いて潰すのみ
 ただ眼を刳り貫いて潰すのみ)

雪降る宇宙の冷たさが
染み入るようなこの夕べ
俺は沢庵を噛みながら
胸奥の不安を蹴散らして
恐怖が襲うその手前
達磨のように揺れている















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