寒波と二日酔い/ただのみきや
首をかしげ
足跡をつけながら日差しへ進み出る
かと思えば扇子のよう
ぱっと開いて朝に歯向かう素振り
ほんの短い時間
男は一本の煙草を吸った
ほんの短い時間だった
男が喫煙所に立っていたのは
吸殻は灰皿へ捨てられて
他と見分けが付かなくなった
ニコチンは男の血液に溶けてはいたが
吸い終わった煙草など
思い出すことはなかった
男の命が尽きるまで
時間にとってはあまりに短かすぎた
河面に降った一粒の雨が
何時とか何処とか言えないように
《2020年12月20日》
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