人生は楽園/こたきひろし
 
ゃない雨垂れが落ちてきて下手をすると擦り切れた靴に落ちて来そうな気配を感じるのだ

違った
擦り切れてるのは靴じゃなくて俺の五体だ
五感かも知れない

人生は楽園じゃない
楽園じゃなくて良かったとしみじみ思ってる

還暦過ぎて五年
未だに安穏の日々は得られないまま
余勢を持て余している

四苦八苦を積み重ねる日々だ
四苦八苦を積み重ねる日々の間にも
一冊の本の頁に挟まれるしおりみたいに
僅かな休息と憩いがうまれる

人生は楽園じゃなくて良かったとしみじみ思っている
それが年輪を重ねに重ねた俺が
辿り着いた境地かも知れない
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