雪の予感/道草次郎
出て、なにかの葉っぱに空いたいくつかの穴を覗くと、動きの鈍い蟻の姿が見えたっけ。なんだかそれだけのことが、変に不安なんだからやっぱり冬だなんだなあと思う。
ここ北信濃の一地方都市は、盆地に位置していて四方を個性的な山々に囲まれている。各山の天頂は言うまでもないが裾野の方までその冷雪は迫って来ている。
何も季節は、きらびやかな初夏、芽吹きの春、憂いを帯びた秋だけが良いのじゃないよな、そんなふうに思いながらデイリーヤマザキの駐車場に車をとめる。
そうさ、知っているとも、とぼくは思った。
丸裸になったヤマブキは黒い実をそれぞれ三つずつ付け、長い冬にむかい果敢に身構えているし、地に
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