母が壊れてしまったあの日から/健
座席に無理やり乗せて、家族4人で総合病院へ向かったこと。
イヤフォンで耳をふさぐようにして聴いていた曲が、あまりにも綺麗な音色だったこと。
薬か何かでひとまず落ち着きを取り戻し、帰路に就いた母の憔悴しきった顔。
そんな捨てたくても捨てられない記憶の欠片が、今もふとした時に頭の中によみがえってくるのだった。
・壊れてしまった
2020年の現在は、「統合失調症」という病名が浸透してきたが、15年前はまだ「精神分裂病」という表現が残っており、私の頭に刻み込まれたのもそちらの病名だった。
当時の私にとって、その響きは何か絶望的なものであるように思えた。
これを読ん
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