詩の日めくり 二〇一四年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
円筒形のパパが
教室の真ん中に現われた
円筒形のパパは
くるくる回転していて
ぼくは授業中なので
驚いた顔をしてみせるわけにもいかず
黒板に向かって
複雑な因数分解の解法について書き出した
式を書き終わったところで振り返ると
やっぱり円筒形のパパは
教室の真ん中で
くるくる回転していて
ぼくは生徒がノートをとり終わるのを待つふりをしながら
生徒の机と宙に浮かんだ円筒形のパパに
交互に目をやった
ほとんどの生徒のペンの動きがとまったことを確かめると
黒板に向かって式の解説をはじめた
黒板をみるときに
ちらっと目の端でとらえた円筒形
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