「車窓」/服部 剛
線路は明日へ、延びてゆく
明日の線路は、過去へ至り
過去はまた道の続きへ
二度とない今日の日を経て
旅の列車は走り始める
恋に傷んだ、町を過ぎ
日々の重さに憂う、町を過ぎ
0・1秒のいまを過ぎる 車窓
ビル・ビル・雲・学校・工場
過去・過去・いま
いま・いま・明日
明日・明日・いま
いつしか――山・山・霧
の向こうに透ける白い太陽
全ては やがて
思い出になるだろう
旅の列車の
前に座る、女子がふたり
ささやかに語らう
日々の恋の懊悩(おうのう)よ
いつか今日の場面は
額縁に納まる 一枚の絵 になるだろう
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