詩の日めくり 二〇一四年十月一日─三十一日/田中宏輔
 
のうち
とびきり美しかった土曜日と
嘘ばかりついて
ぼくを喜ばせ
ぼくを泣かせた土曜日が
カウンターに腰かけていた。
ほかの土曜日たちの目線をさけながら
ぼくはお目当ての土曜日のそばに近づいて
その肩に手を置いた。
その瞬間
耳元に息を吹きかけられた。
ぼくは
びくっとして振り返った。
このあいだの土曜日が微笑んでいた。
お目当ての土曜日は
ぼくたちを見て
コースターの裏に
さっとペンを走らせると
そのコースターを
ぼくの手に渡して
ぼくたちから離れていった。

二〇一四年十月二十日 「チョコレートの半減期」


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