詩の日めくり 二〇一四年十月一日─三十一日/田中宏輔
 
えを移動する
みんな夢中になって
音と戯れる
音もおもしろがって
たくさんのひとたちの手のひらのうえを移動する
驚きと笑いに満ちた顔たち
音と同じようにはずむ息と息
たったひとつの音と
ただぼくたちの手のひらがあるだけなのに

二〇一四年十月十三日 「ある青年の日記を読んで」

その青年は
何年か前にメールだけのやりとりをしたことがあって
それで、顔を覚えていたので彼の日記を見てたら

仕事でいらいらしたことがあって
上司とけんかして
それでまたいらいらして
せっかく恋人といっしょに
出かけたのに
道行くサラリーマンに

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