12.3 朝のメモ/道草次郎
「あなた」
あなたと書くと、あなたとしか言えない見知らぬあなたを手招いてしまう。けれどもあなたがあなたをそういう風に読まなければ、あなたは自分が呼ばれたことに気づくこともない。あなたにそれを判断させるのは文脈であり、文脈とは山脈である。山脈とは動脈であり動脈は静脈へと繋がっている。そうやってあなたの判断の源はあなたの身体のなかを循環している。あなたがもし、文脈という語が山脈へと転化させられたその無聊さに疑問を差し挟むのならば、あなたはもうこのあなたの網にかかった魚。一つの瑕疵が関心を引き寄せる、ありふれた、しかしたいへん美しい好例である。
「ゼンマイ仕掛け」
ゼンマイ仕掛けの
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