四トントラック/為平 澪
 
ネジ、でもなく
四トントラックだったかもしれない

トラックを引き渡す日
わたしは荷台とドアの間の梯子をつたって
トラックの天辺で山に沈む夕陽を見ていた
日が暮れても工場から帰らなかった
工場はもう社名の違う看板が掛けられていて
遠くからきた人たちのものになっていた

夕陽に焼け焦げる空と仄暗い山を見ていると
真っ新なトラックに置いてけぼりにされて
なんで連れて行ってくれへんのや!と
泣き喚く女の子がトラックの後を駆けていく

困り果てた赤ら顔で骨太の男の手が
彼女を運転席の横に乗せると
女の子が泣き止むまでいつまでもいつまでも
ずっと、一緒に 走り続けていく

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