人宿り/後期
人宿り
もうすぐ僕が降ってくる
はるか高い屋上の
錆びた柵を乗り越えて
西日を浴びた夕刻の
遠い目をした僕が
真っ逆さまに
降ってくるでしょう
僕の僕だけの降人予報
確率は70パーセント
落下する僕に耐え得る
強靭な傘はどこに売っているの?
僕はビルの狭い軒先に
これでもかと背中を
減り込ませて
瞬く心臓に
踊らされて
今か今かと
予報70パーセントを
血走らせた片目で待っている
雷のような
惜別の叫びは聞こえなかった
のどかなカラスの鳴き声が
遠くで聞こえただけだった
一瞬、目の前を掠れた影が覆い
重い低いドラムが一つ
路上に鳴
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