詩の日めくり 二〇一四年九月一日─三十一日/田中宏輔
てきらきらと輝いていた。妖精が翅を動かして空中に浮かびあがると、机のうえに重ねて置いてあった書類の束がばらばらになって部屋じゅうに舞い上がった。妖精は窓辺に行き、その小さな手で窓をすっかりあけきると、背中の翅を羽ばたかせて未明の空へと飛び立った。もとはグレゴールであったがいまでは巨大な黒い甲虫のようなものになった生き物は、まだ眠っていた。もうすこしして太陽が顔をのぞかせるまで、それが目を覚ますことはなかった。
二〇一四年九月二日 「言葉の重さ」
水より軽い言葉は
水に浮く。
水より重い言葉は
水に沈む。
二〇一四年九月三日 「問題」
1秒間に、現実の過去の3分の
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