日々の花/木立 悟
 


花に触れた虫たちが
ひらきふるえる花になり
花のまわりを
まわりつづける


暗闇のなか
さまざまな数字たちが立ち上がり
わずかに差し込む光の下で
花粉のように踊りはじめる


あじさい
あさがお
ねこ
こちらを見つめて動かない
まっすぐ冷たく落ちてくる
真夜中の雨のように
ひとつひとつを
指さす目で見つめる


空が空ではなくなる午後に
東と西のさかいめで
笑っている子
ほんとうの子
朝ではないという理由で
夜を責めることのない子
笑えないひとりの光に
触れることのできる子
ひろげた両手
咲きひらく子


知らぬ間に花は近づいて
めざめの息を見つめている
朝の花は午後に
午後の花は夜に
夜の花は朝に
昼の花は見ないふりをして
少しずつ少しずつ
壊れた時計の
数字のようにずれながら
まわりつづけ
まわりつづけ
見つめている




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