命焔屋 〜蝋燭の焔の魂〜(短編小説)/月夜乃海花
キ殿、いや、ユウキ君?君で良いかの?これからよろしく頼む。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「わん!わん!」
急に子犬が吠えだす。
「そういえば、そやつに名前を付けなくて良いのかの?」
そうだ。この子犬には名前が無い。
「名前は非常に大事なものじゃ。名前を忘れたら何処の世界にも逝けなくなる。」
老人は呟いた。
その意味を今はまだ理解できなかった。
さて、この犬の名前をどうしようか。
じーっと子犬が見つめてくる。身体の毛の色は黄金に光り輝いていた。まるで焔のように。
「リヒト。」
「ほう。」
「確かヨーロッパの国の名前で『光』という意味です。」
「良い名前じゃの。」
こうして、湧生ことユウキと子犬リヒトは命焔屋で老人の手伝いをすることになった。そして、命の儚さや人間の哀しみや喜びを知ることになる。それはきっと、また別のお話。
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